まず、横から眺めたい。
この車を選ぶ理由は、数字を見る前に見つかるかもしれない。長い前半分と、後ろへなだらかに下がる屋根。公式写真を横から見ると、クーペの形そのものを楽しみたくなる。
DB12 Sは、2025年10月に発表されたDB12の高性能モデル。ボンネットの通気口や前後の空力部品など、見た目にも専用の仕立てがある。派手な飾りを足すだけでなく、冷却や空気の流れにも役割を持たせている。
全体の流れを眺めてから細部を見る。この順番で楽しめるのが、この車のいいところだと思う。小さなSのバッジまで目を移すと、大きな姿と小さな印の対比も面白い。

700PS。でも、数字の差だけでは選べない。
エンジンは4.0リッターV8ツインターボ。最高出力は700PS、最大トルクは800Nm。0–100km/h加速は3.5秒、最高速度は325km/hと公表されている。
通常のDB12との出力差は20PS。0–100km/h加速の差は0.1秒で、最大トルクと最高速度は同じだ。この比較だけなら、違いは小さく見える。
だからこそ見たいのは、その力をどう使うか。Sでは変速や足まわりにも手が入っている。買う理由を「いちばん大きな数字」だけに求めず、車全体の仕立てまで見ると、選ぶ楽しみが広がる。

速く走るために、止まるところまで。
カーボンセラミックブレーキは標準装備。通常の鉄製ブレーキに比べ、ばね下重量を27kg減らすという。これは車全体が通常のDB12より27kg軽い、という意味ではない。
ばね下重量とは、タイヤやブレーキなど、サスペンションのばねより路面側にある部分の重さ。エンジンの力を増すだけでなく、車輪の周りにも手を入れた点がSらしい。
ダンパーやステアリングなども専用に調整されている。ただし、硬さや乗り心地の好みは実車で確かめたい。短い試乗でも、きれいな道だけでなく、普段走る道に近い路面を通ってみると判断しやすいはずだ。
後ろ姿にも、音にも、Sの個性。
後ろへ回ると目を引くのが、左右それぞれ縦に並ぶ4本の排気口。低い車体の両端に置かれたその形は、正面とは違う表情をつくっている。
標準のステンレス製に加え、チタン製の排気システムもオプションで用意される。メーカーによれば、チタン仕様は標準のシステムより11.7kg軽い。
音は、映像や数値だけでは選びにくい部分だ。大きければ好みとは限らない。始動時だけでなく、落ち着いて走る場面でもどう聞こえるか。選べるなら、そんな違いまで確かめてみたい。

運転席を、自分の好みに仕立てる。
室内はレザーとアルカンターラの組み合わせや、レザーを中心とした仕立てから選べる。標準のSport Plusシートは16方向に電動調整でき、カーボンファイバー製のパフォーマンスシートも選択肢に入る。
見た目の好みと、長く座っていたい感覚。その両方を比べられるのが、このクラスの車選びの面白さだ。スポーティーなシートが、すべての人にとって正解とは限らない。背中や肩の収まりも、実際に座って確かめたい。
車体の色を先に決めるのか、室内の素材から考えるのか。外から眺める一台と、自分が過ごす場所を一緒につくる。その時間も、DB12 Sの楽しみになりそうだ。

通常のDB12と、どう選ぶ?
比較すると、Sは最高速度のためだけに選ぶモデルではないと分かる。ブレーキや足まわり、外観の専用装備にどれだけ惹かれるかが、大きな分かれ目になる。
一方で、通常のDB12にも680PSがある。「Sではないから物足りない」と決めつける必要はない。デザイン、乗り心地、希望する装備を同じ条件で並べて、自分に合う一台を選びたい。
日本での購入総額は、選ぶ装備や諸費用を含めて正規販売店で確認したい。ここでは確認できていない国内価格や納期を数字で埋めず、メーカー公表のクーペの性能を比べた。
| 項目 | DB12 | DB12 S |
|---|---|---|
| 最高出力 | 680PS | 700PS |
| 最大トルク | 800Nm | 800Nm |
| 0–100km/h | 3.6秒 | 3.5秒 |
| 最高速度 | 325km/h | 325km/h |
| 標準ブレーキ | スチール | カーボンセラミック |
※メーカー公表値。クーペ同士の比較。市場・年式・装備により仕様は異なる場合があります。
LUQの見方
DB12 Sに惹かれるのは、700PSという数字と、駐車してからも振り返りたくなる姿が、一台の中にあることだ。
走りに関わる装備を選び、室内の素材を考え、少し遠い目的地を思い浮かべる。車を持つ楽しみは、移動にかかる時間を短くすることだけではない。
この車なら、どこへ行きたいだろう。写真を眺めながらそんなことを考え始めたら、もう十分に魅力は伝わっている。

※公式資料をもとにした紹介記事です。実車の試乗記事ではありません。
参考資料
